2020年からの新学習指導要領

新学習指導要領のスケジュール

 学習指導要領は、時代の変化や子供たちを取り巻く状況、社会のニーズなどを踏まえ、約10年ごとに改訂されており、教科書なども学習指導要領の改訂を受けて変わります。
 前回の小中学校の学習指導要領改訂(2008年改訂、2011年に小学校、2012年に中学校で完全実施)から約10年経ち、2017年3月に戦後9度目の学習指導要領改訂が行われました。この新しい学習指導要領に基づく授業が、小学校では2020年度、中学校では2021年度、高等学校では2022年度から全面実施されます。
 ここでは、特に来年度から実施される小学校を中心に、具体的にどのような変化があるのか見ていきたいと思います。

外国語教育

 これまで小学校5・6年で学習していた「外国語活動」を3・4年生に移動させ、5・6年生には教科としての「外国語」が導入されます。教科としての扱いなので、検定教科書を使用し、試験なども行って成績を評価することになります。文科省の方針では、「文法などの知識の詰め込みではない。中学英語の先取りではない」としているものの、一方で小学校のうちに覚えるべき単語数は600~700という目標も掲げています。(これは現行の中学英語で学習する単語数の約半数です)。
 2021年度からは中学でも新学習指導要領が実施されるので、中学3年間の目標単語数は現在の1200語から1600〜1800語に増え、これまで高校課程で学習していた仮定法や原形不定詞などの文法事項も加わります。
 これらの点を考えると、結局のところ実質的には現在の中1~中2の前半あたりに相当する内容を、小学校5・6年の「外国語」で先取りすることになるのではないかと思われます。

プログラミング教育

 小学校で「プログラミング教育」が必修化されます。文科省によると、教育の目的としては、「コンピュータに意図した処理を行わせるための論理的な思考力『プログラミング的思考』などを育む」としていますが、具体的な学年、授業内容に関しては、明確に決められているわけではありません。「様々な教科・学年・単元で取り入れ」「各学校の創意工夫により、様々な単元等で積極的に取り組む」ことが望まれており、それぞれの学校である程度、自由に実施することになっています。新しく『プログラミング』という教科が作られるわけではないので、算数や理科、総合的な学習の時間など、すでにある教科の中で実践されることになります。
 これを受け、さまざまな教材会社や民間教育機関が発表を行っていますが、企業ごとに授業案が大きく異なっている状況で、しばらくの間は、学校や地域によって異なった授業が進められることが予想されます。
 また、中学校ではプログラミングに関する内容を充実するとともに、高等学校では必修科目「情報Ⅰ」を新設し、全ての生徒がプログラミングのほか、ネットワークやデータベースの基礎などについて学習することになっています。

その他

 社会生活に関連するような学習内容が数多く追加されているのも、今回の指導要領改訂の特徴と言えるでしょう。
 たとえば、小学校では社会科で「販売業において売り上げを高めるために行われている工夫」、家庭科では「買い物の仕組み、売買契約の基礎」などが加えられました。中学校では、社会科の公民分野で「個人や企業の経済活動における役割と責任」「消費者の保護とその意義」など、技術・家庭科の家庭分野では「クレジットなどの三者間契約」「消費者被害の背景とその対応について」「自立した消費者としての責任ある消費行動」などが追加されます。
 選挙権年齢が18歳に引き下げられ、2022年度からは成年年齢が18歳に引き下げられることを受けて、高等学校では公民科に必修科目「公共」が新設され、「起業に関する教育」「金融教育」「防災・安全教育」「国土に関する教育」などを学習します。
 また、小・中学校では「特別の教科 道徳」が新設されます。検定教科書を使用し、教師の記述による評価もされることになります。